厚生労働省公認のワクチン筋注方法、予診方法
厚生労働省から、「公式」ワクチン筋注動画が公開されました。
ぜひご覧ください。
筋注の内容としては、以前のブログ記事に書いた、中島医院での規定接種方法とほぼ同様となっております。
また、予診の際に「聴診や、触診をしなければならないのか、しなくて良いのか」についても、驚いたことに公式な見解が動画で公表されました。予診を担当される先生方も、ぜひご覧ください。
コミナティの希釈、分注の方法
コミナティは、非常に壊れやすい脂質の微小な小球構造に、これまた非常に壊れやすいmRNAが入ったワクチンになっています。
そのため、コミナティを生食で希釈し、さらに分注する際には、細かい手順が定められています。
さらに、今後供給されるコミナティには、「1バイアルから6本取れる注射器」が国から配布される予定となっていますが、1バイアルから0.3 ml分注するのは至難の業らしいです。
そのため、事前に十分に、手順を繰り返し練習しておく必要があります。
以下に、3つの動画を貼付しました。最初の二つは、千葉大学および三次市立病院の、マニュアル動画です。
そして、3つ目が、カナダの大学病院でのマニュアル動画です。このカナダの動画には、「6本取るためのコツ」が示されています。
接種に関わる方皆様は、ぜひ、これらの動画をご覧になって、実際に練習も行ってから、接種に臨んでください。
希釈と分注において、「やってはならないこと」は、以下のCDCのインフォメーションをご覧下さい。(英文です。日本にはこのようなインフォメーションは示されていません。)
https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/info-by-product/pfizer/downloads/diluent-poster.pdf
まとめると以下のようになります。
希釈時:専用シリンジと針しか使ってはならない。
付属外の生食は使ってはならない(保存料でワクチンが破壊されることがある)
生食は1.8mlしかつかってはならない(あたりまえですね)
バイアルは振ってはならない。振ってしまったら廃棄。
付属生食は1.8ml使ったら他のバイアルには使ってはならない。すぐ捨てる。
分注時:バイアルのゴム栓は計7回刺さなければならないが、同じところを刺すと中身が漏れてしまうことがあるので、刺す場所は刺すごとに変えなければならない。
注射器のエア抜きをするのはバイアル内で。バイアルから抜いてからエア抜きをすると、ワクチンが漏れてしまう。
バイアルに残ったワクチンが0.3ml未満だった場合に、他のバイアルのワクチンと合わせて0.3mlにしてはならない。0.3ml未満だったら廃棄する。
新型コロナウイルスワクチン接種:ワクチン筋注の具体的な方法について(2)
(前回記事からの続きです)
肩の三角筋にワクチンを筋注する場合、注意しなければならない合併症は、
の4点です。
これらの内、上の3つに関しては、接種時の姿勢、接種部位の正しい同定が重要です。そのため、日本プライマリケア連合学会は、三角筋筋注の動画をYouTubeで公開しています。
https://www.youtube.com/watch?v=TwoMs0BjIdk
この方法のもとになった資料は、奈良医科大学の整形外科の先生が作成したものです。以下です。
https://www.naramed-u.ac.jp/~resident/medical07_manual.htm
さらに、肩関節専門の整形外科の先生が、わかりやすく解説している動画もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=kEnZ_dTSAmE&t=21s
この、日本プライマリケア連合学会の方法は、厚生労働省ホームページにも記載されているので、ある種・・・「認められた方法」と、考えても良いかもしれません。
しかしながら、日本プライマリケア連合学会推奨の接種部位は、高さは腋窩ひだ上縁なのですが、実は、高さについては、米国CDCでは「肩峰より3指幅下」を推奨しており、日本医師会も「肩峰より3横指下」を推奨しています。
https://www.med.or.jp/dl-med/kansen/novel_corona/sokuho/20210226vaccine05.pdf
この、「3横指下」という位置は、より広い地域で行われ、日本プライマリケア連合学会や奈良県立医大よりも遥かに大きい団体であるCDCや日本医師会が推奨しています。
そのため、もし、「筋注による合併症」が起きた場合の法的問題や救済制度の適応を考慮すると、「3横指下」の接種の方が、「法的には安全」かもしれません。
そこで、今回、中島医院としては、以下のように行う予定です。
- 日本プライマリケア連合学会が推奨する位置とその理由について、十分理解し、合併症を来すような部位に対する理解を十分深める。
- 上肢は下した状態にする(橈骨神経を傷害しないため)。
- 肩峰より3横指より上には接種しない(滑液包を障害する恐れがあるため)。
- 肩峰より3横指下に接種するが、三角筋の中央が3横指より下ならば、中央を接種点にする。
先日、菅首相が接種した際も、上記と同様の方法で接種しているように見受けられました。また、千葉大学病院もこのような方法で行っているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=ptJ_Lgy0AKg
接種を受けられる方で、心配や疑問がおありならば、遠慮なく中島医院城田に相談して下さい。
新型コロナウイルスワクチン接種:ワクチン筋注の具体的な方法について(1)
新型コロナウイルスワクチンは、「三角筋に筋注」しなければなりません。
なぜインフルエンザワクチンのように皮下注ではいけないのでしょうか?
実は、注射で行うワクチンについては、生ワクチンなどの一部のワクチンを除いて、日本を除く全世界では、「筋注」が基本なのです。
なぜ筋注が選択されるのか?その理由は、
- 筋層内に投与する方が、免疫効果が高い
- 局所の疼痛や副反応が生じにくい
からです。
インフルエンザワクチンについても、筋注の方が、皮下注よりも予防効果が高い可能性があることを示唆する研究もあるようです。
ではなぜ、効果が劣る皮下注を日本では行っているのでしょうか?
かつて1960年代に、日本では、抗生物質や解熱鎮痛剤を頻回に大腿に筋注するという医療が行われ、そのために大腿四頭筋が拘縮してしまった人たちを大量に生み出した過去がありました。当時大きな社会問題になり、集団訴訟も行われています。
この惨事は、「おなじ大腿筋に、刺激の強い抗生物質や解熱鎮痛剤を、それこそ10回以上筋注した」から起こったことでした。ですので、量も少ないワクチンを、しかも場所を変えて数回行ったからと言って、筋肉が拘縮したりすることは無いのですが・・・それなのに、その事件以降、「筋注を過度に恐れる」ようになり、ワクチン接種も皮下注になってしまったわけです。
ワクチンの皮下注と筋注の違いについては、以下に参考となる記事を貼付しております。
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2016/PA03162_02
今回の新型コロナウイルスワクチン=コミナティは、筋注で95%の効果が得られることが分かっていますが、皮下注での投与は行われていないため、皮下注では効果が得られるかは不明ですし、理論上は効果が劣る可能性が考えられます。
この「ワクチン筋注について」ですが、
皆様も、B型肝炎ワクチンや、ニューモバックスなどについては筋注で投与されてきたことと想像しますが、
全成人住民対象という多数の人に、ワクチンを「筋注」することは、日本の医療機関では行われていないと思われます。
そのため、ワクチン筋注の具体的な方法について、十分理解して行うことが重要です。
次の記事で、その具体的な方法についてご説明致します。
3月7日時点でのアナフィラキシー報告
3月5日までの日本では46469人への一回目ワクチン接種が行われました。
そして、3月7日現在、厚生労働省の発表によれば、3名のアナフィラキシーの報告がなされています。
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000749735.pdf
まだ、ワクチンが行われたのが日本ではたったの5万人程度なので、なんとも言えませんが、米国の「100万人に対してアナフィラキシーは5人程度」よりも、多い印象との専門家意見もあります。
※まだ5万人のデータなので、8790万回接種した米国のデータとは信頼度が異なりますので、本当に多いのかどうかはこれから明らかになると思われます。
しかしながら、実際の接種に当たっては、アナフィラキシーには十分に注意が必要なことは間違いありません。
皆様の中で、何らかの理由(薬剤、食物、蜂など)でアナフィラキシーを生じたことがある人は、接種前に必ずお勤めの医療機関の先生や、私にご相談下さい。
さて・・・皆様の接種会場となる中島医院では、アナフィラキシーに対する薬剤、医療機器を十分準備して接種に備えております。
皆様の医療機関と同様に、私共の施設でも、蜂によるアナフィラキシーやアナフィラキシーショックの患者さんの救急搬送を受け入れております。いま思いつくだけでも、数か月内に2例のアナフィラキシー及びアナフィラキシーショックの治療を行っており、以前勤めていたある勤務地では比較的高頻度に食物や蜂によるアナフィラキシーの患者さんの搬送や受診がありました。
アナフィラキシーは、ガイドラインに沿った診療を行えば、多くのケースで回復されますし、実際米国では8790万回のワクチン接種がすでに行われていますが、アナフィラキシーでの死者は出ていません。
皆様に少しでも安心して接種を受けて頂けるように、当院としてはアナフィラキシーに十分備えた体制で接種を提供する所存です。
ご質問が多い、他の副反応である「発熱」や「頭痛」については、後日このブログにてご説明させて頂きます。