新型コロナウイルスワクチン 石川町の医療従事者の皆様

新型コロナウイルスワクチン 石川町の医療従事者の皆様へ

 

新型コロナウイルスワクチンの接種が、3月中旬にも開始される見込みです。ワクチンの接種については、不明な点や不安な点が数多くあると思います。

以下に、現時点で、新型コロナウイルスワクチンについてわかっている事をご説明しております。これをご覧になって、少しでも不安な点が解消されれば幸いです。

 

今回、医療従事者の皆様に接種する予定となっているのは、Pfizer-BioNTech製の、「mRNAワクチン」というものです。「コミナティ」という名前がつけられています。

これには、新型コロナウイルスのmRNAという、蛋白質の設計図を、特殊な脂質の非常に小さな球体の中に入れてあります。

それを肩の三角筋に注入し、特殊な脂質の球体の性質を利用してmRNA蛋白質の設計図)を細胞内に取り込ませます。

細胞に取り込まれた新型コロナウイルスのmRNAは、ウイルスの表面のトゲにあたる蛋白質を細胞に作らせます。そして、そのウイルスのトゲ蛋白質に対する免疫が生成されます。

このmRNAは、「トゲ蛋白」についてだけの設計図なので、ウイルス本体は作られません。また、mRNAは人の遺伝子DNAとは居場所も構造もまったく異なるので、人の遺伝子DNAには何らの影響も与えることが出来ません。

 

現在分かっているところでは、Pfizer-BioNTech製ワクチンは、接種しなければ100人新型コロナウイルス感染症が発症するところを、接種すれば5人しか発症しない、という効果があります。「100人発症するところを5人の発症に減らす」ワクチンです。これを「95%の効果」と説明しています。最近イスラエルから報告された結果でも、多人数への接種で93%の効果が認められているようです。

 

インフルエンザのワクチンは「100人発症するところを40~60人の発症に減らす」ので、40~60%の効果です。今回の新型コロナウイルスワクチンは、インフルエンザのワクチンに比べれば、圧倒的に効果が高く、麻疹(はしか)のワクチンぐらいの高効果があると考えられています。

 

効果について分かっていないのは、「どのくらいの期間まで効果が持続するのか」「発症は95%抑制しても、無症状の感染はどのくらい防げるのか」といった点です。これらについては今後明らかになってくると考えられます。

また、「変異型ウイルスへの効果」については、2月8日付nature medicine掲載の論文(Pfizer-BioNTechとテキサス大学の共同研究)によれば、変異型ウイルスへも同様の効果がある可能性が示唆されています。もちろん、大人数での臨床データの結果ではないので、明らかに効果があるかはこれからの報告を待つ必要があります。

 

  • 接種の方法

肩の筋肉(三角筋)に筋肉注射します。接種は21日間隔で2回です。一回だけの接種では、イスラエルでの結果では、効果が30%ぐらいしか無いことが分かっています。そして、一回だけでは、そのわずか30%の効果も急速に減退する可能性が示唆されています。21日間隔で二回接種が必須です。

 

  • 新型コロナワクチンの副作用

すでに接種が行われている米国のCDC、FDAで非常に大規模な調査が現在も進行中です。米国での4100万回の接種のデータからは、アナフィラキシーを除く深刻な副作用の可能性は認められていません。

問題となっているアナフィラキシーですが、米国では100万人に5人の発症が報告されています。インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーが100万人に1.4人と言われています。また、抗生物質によるアナフィラキシーは、100万人に200人程度と言われています。

重篤ではない副反応として、注射した部位の疼痛や、頭痛、全身倦怠感、そして発熱があります。下痢も報告されています。

38℃以上の発熱がでることも、おおまかに10人に1人ぐらいあると報告されています。発熱や全身倦怠感などの副作用は2日程度で消失すると言われています。しかし、接種翌日の勤務に影響しますので、中島医院では接種日や施設ごとの接種のグループ分けについて検討する予定です。

 

  • 接種できない人

 

日本では、以下の人については、接種出来ません。

 

1.明らかに発熱している方 

2.重い急性疾患にかかっている方 

3.このワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往歴のある方 

4.上記以外で予防接種を受けることが不適当な状態にある方

 

問題になるのは、「このワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往歴のある方」ですが、米国CDCでの接種基準に照らすと、以下のように考えられます。

 

1.新型コロナウイルスワクチンの一回目の接種で、アナフィラキシーになったか、接種直後に何らかのアレルギー反応が出た人は、二回目の接種はできない。

 

2.ポリエチレングリコール、ポリソルベートなどの、Pfizer-BioNTech製ワクチンの成分に対して、即即時型のアレルギー反応がある人は接種出来ない

ポリエチレングリコールは化粧品や、さまざまな薬品の保存剤に使われています。また、大腸内視鏡の前処置に使う下剤の一部(ニフレック)に含まれています。

ポリソルベートは化粧品に含まれていることが多い薬剤です。

そのため、化粧品を使用した直後にアレルギー反応が出たことがある人は、接種については必ず医師に相談して下さい。

 

接種にあたり、事前に医師に相談が必要な人

 

①           抗凝固療法を受けている方、血小板減少症または凝固障害のある方

②           過去に免疫不全の診断を受けた方、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方

③           心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある方

④           過去に予防接種を受けて、接種後2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた方

⑤           過去にけいれんを起こしたことがある方

⑥           本ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こるおそれがある方

⑦           腎機能障害のある方

⑧           肝機能障害のある方

 

補足して説明します。①抗凝固療法を受けている方・・・は、今回のワクチンは「筋注」で行うため、注射部位に出血を起こしたりする可能性があるからです。これについては、新型コロナウイルスワクチンのみの話ではなく、一般的な筋注製剤はすべてにあてはまります。

②ワクチンの効果が弱い可能性があるからです。副作用が出やすいわけではありません。

③インフルエンザワクチンなど、すべてのワクチンであてはまる項目です。

新型コロナウイルスワクチンの成分の一部は、他の注射薬に保存料として使われている可能性があります。そのため、過去に何らかの注射でアレルギー反応が出た人は、新型コロナウイルスワクチンに対してアレルギーの可能性があり得ます。

⑤インフルエンザワクチンなど、すべてのワクチンであてはまる項目です。

⑥食物アレルギーや、注射薬ではない他の薬剤(抗生剤など)に対するアレルギーの方は、米国CDCの勧告では接種可能ですし、今回の日本の場合も、「接種される人の状態を良く判断して、しっかり説明して承諾されれば接種してよい」とされています。蜂や食物アレルギーでアナフィラキシーになったことのある方は、日本の場合は特別な決まりはありませんが、米国では接種後30分の観察が推奨されています。

また、妊婦さんについては、事前に良く判断して接種可能となっていますが、日本産婦人科感染症学会では、妊婦さんへの接種は「母児管理のできる産婦人科で接種する」ことを推奨しています。

 

さらに、「免疫抑制剤を使用している人、悪性腫瘍のある人」についても日本では特別な決まりはありませんが、米国CDCでは、接種可能と判断されています。事前に診療している医師にご相談ください。

 

 

 

新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」の、接種者向け説明書は以下のリンクをご覧下さい。

 

https://www.pfizer-covid19-vaccine.jp/%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%92%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%96%B9%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E3%81%94%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%81%B8.pdf

 

また、各医院の先生方、薬剤師の先生方は、以下の添付文書をご覧ください。

 

https://www.pfizer-covid19-vaccine.jp/%E6%B7%BB%E4%BB%98%E6%96%87%E6%9B%B8.pdf